コラム

増築するにはどうしたらいい?費用と注意点について

こんにちは。地元豊橋、豊川で増改築リフォーム専門店を営んでいるありがとうの家です。

 

子ども部屋を増やしたい場合や介護のためなどで、増築を検討されている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、どのように進めたら良いのか、費用はどれぐらいかかるのか、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、増築にかかる費用や注意点など、増築についておさえておくべき点をご紹介します。

 

 

1.増築と改築の違い

増築とは、1階の面積を広げたり、平屋を2階建てにしたりするなど、同じ敷地内で建物の床面積を増やすことをいいます。

敷地内に離れやカーポートといった新たな建物をつくったり、ベランダをつくったりするのも増築です。

これと似ている改築は、建物の床面積を変えずに建物全体や一部を壊して施工します。

例えば、トイレや浴室を新しくしたり、部屋の間取りを住みやすいように変更したりするなどがあります。

この2つの違いをまとめると、増築では既存の建物を壊さずに床面積を増やしますが、改築では既存の建物を壊すため床面積はほとんど変わりません。

なお、増築は改築よりも工期が短いことが多く、解体費用も抑えられます。

2.増築のメリット

ここでは、増築のメリットを3つご紹介します。

2-1.居住スペースを広げられる

増築では床面積が増えるため、間取りを変更する場合よりも居住スペースを広げられるのがメリットです。

子ども部屋や書斎など、新たに部屋をつくりたい場合に適しています。

2-2.費用を抑えられる

新築や建て替えに比べて費用を抑えられるのも、増築のメリットです。

新築や建て替えでは、数千万円の建築費用に加えて、土地代や解体費用がかかります。

また、建て替え時に建物を解体する際には、仮住まいや家財を預けるための倉庫のレンタル費用もかかります。

一方で、増築は必要な部分だけの工事なので、費用は数百万円程度に抑えられます。

費用は抑えつつ、居住スペースを広げたい場合におすすめです。

2-3.住みながら工事ができる

増築では、現状の建物をそのままに居住スペースを広げるため、住みながら工事を行うことができます。

このため、一時的に住まいを移動する手間がなく、仮住まいにかかる費用が不要なのも大きなメリットです。

3.増築のデメリット

次に、増築のデメリットを2つご紹介します。

3-1.見た目の統一感がなくなることがある

増築では、現状の建物と同じ外壁材や屋根材が用意できなかった場合、見た目の統一感がなくなってしまうことがあります。

現状の建物とは違う外壁材や屋根材を使用することで、増築した部分が明らかに分かる仕上がりになってしまいます。

3-2.自然災害によって耐震性が下がる

増築では、自然災害によって、現状の建物との接続部分の耐震性が下がる可能性が高くなります。

これは、自然災害の強い衝撃によるもので、施工技術に関係なく起こり得ます。

4.増築における「建ぺい率」と「容積率」

建物の建ぺい率や容積率によっては、希望通りの増築ができないこともあるため、事前に確認が必要です。

建ぺい率は敷地面積に対する建物の面積の割合で、容積率は敷地面積に対する建物の床面積の割合です。

建ぺい率と容積率には上限があり、これを超える増築はできず、上限を超えて施工した場合、撤去を命じられることもあります。

例えば、敷地面積200㎡、建ぺい率50%、容積率100%の場合、建ぺい率の上限は100㎡、容積率の上限は200㎡です。

建ぺい率と容積率の上限は地域によって異なり、高さ制限や日照条件に関する制限といったさまざまな制限を、独自に設けている地域もあります。

このため、増築を行う際には、このような条件を事前に確認しておくようにしましょう。

5.増築の確認申請について

増築では、ほとんどの場合で確認申請が必要になります。

ここでは、増設における確認申請について、手順や費用などを解説します。

5-1.確認申請とは

確認申請とは、増築の許可を得るために必要な行政に対する申請で、設計図書などが建築基準法や都市計画法に合致しているかの審査を行います。

この書類を作成するには専門的な知識が必要で、素人ではほぼ不可能なため、工事を担当する建築士へ依頼しましょう。

確認申請の手続きには、費用だけでなく日数もかかるため、予算やスケジュールに余裕をもった計画を立てる必要があります。

5-2.申請が必要となるケース

各地域で建ぺい率や容積率などの制限があることから、床面積が増える増築では、事前に確認申請が必要となるケースがあります。

防火地域や準防火地域の場合は、増築する面積にかかわらず、確認申請をしなければなりません。

また、増築が10㎡を超える場合も、確認申請が必須となります。

なお、1階の一部を減築して、空いたスペースにカーポートを増築するなど、減築した上で増築しても原則、増築扱いとなります。

5-3.申請の方法と手順

建築士がいる業者と具体的な増築プランを決めたら、その内容に沿って建築士が確認申請の書類を作成します。

それを役所へ提出したら、1週間〜2週間ほどで審査結果が出ます。

許可が下りて確認済証が発行されたら工事開始です。

なお、場合によっては施工中に中間検査が行われることもあります。

工事が完了したら、審査機関などが申請内容の通りに施工されたかを確認する完了検査を行い、問題がなければ検査済証が発行されます。

5-4.申請にかかる費用

確認申請にかかる費用には、確認申請のための手数料と、書類作成の依頼費用があります。

確認申請のための手数料は、申請、中間検査、完了検査のそれぞれで必要となります。

金額は自治体によって異なりますが、床面積に応じて決められていることがほとんどです。

 

【確認申請のための手数料】

〔~30㎡以内〕

・申請:5千円~1万円

・中間検査:9千円~1万5千円

・完了検査(中間検査なし):1万円~1万6千円

・完了検査(中間検査あり):9千円~1万5千円

〔30㎡超~100㎡以内〕

・申請:9千円~3万2千円

・中間検査:1万1千円~4万円

・完了検査(中間検査なし):1万2千円~4万8千円

・完了検査(中間検査あり):1万1千円~4万8千円

 

確認申請を依頼する場合には、15万円〜30万円程度の費用を支払うことになりますが、この中に確認申請のための手数料が含まれているかどうかを事前に確認しておきましょう。

5-5.許可が下りないケース

実際には、確認申請をしても許可が下りないこともあります。

例えば、建ぺい率や容積率の上限を超えている場合や、高さ制限や北側斜線制限によって3階の増築ができない場合などです。

その他、建築後の法改正などにより、現行の建築基準法に適合しなくなった既存不適格建築物の場合も要注意です。

既存不適格建築物では、増築の許可が下りない場合や、建物全体を現行の法律に合うよう改修すれば増築可能、と判断されることがあります。

このため、増築する際には、現状の建物が既存不適格建築物ではないかを確認しておくと良いでしょう。

5-6.既存不適格の緩和

現状の建物が既存不適格建築物の場合でも、「既存不適格の緩和」という制度に該当するかをチェックしてみると良いでしょう。

通常、既存不適格建築物において確認申請が必要な増築を行う場合、建物全体を現行の法律に合うよう改修するのが基本です。

しかし、この制度では以下のような一定の条件を満たす場合、既存不適格の部分を改修することなく増築できる場合があります。

 

【「既存不適格の緩和」が適用される例】

・増築する面積が50㎡以下で、なおかつ現状の床面積の1/20以下

・増築する面積が現状の床面積の1/2以内

 

なお、この制度を適用するための条件は非常に細かく決められており、増築した箇所の接続方法や、増築後の安全性が確認できるかなどもチェック対象となります。

6.増築に補助金・ローン・減税制度は使える?

建物全体の耐震改修が必要な場合など、増築の費用が高額になりそうで不安、という方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは、増築でも補助金、ローン、減税制度が利用できるのかについて解説します。

6-1.補助金

現状の建物が既存不適格建築物で、耐震補強や改修などが必要な場合は、「耐震リフォームの補助金」を利用できるかもしれません。

また、介護目的や二世帯住宅化などの増築で、バリアフリーリフォームも行う場合には、「バリアフリー工事のための補助金」も活用しやすいでしょう。

ただし、このようなリフォーム補助金のほとんどが、現状の建物を改修する工事のみを対象としています。

このため、現状の建物の改修は行わないような、単純な増築では申請できない可能性が高くなります。

とはいえ、地域によっては増築も対象としているため、一度お住まいの地域の制度を確認してみると良いでしょう。

なお、最近では、親、子、孫の三世代で同居や近居をするための増築に、補助金を支給している自治体も多くみられます。

6-2.ローン・減税制度

基本的に、増築でもリフォームローンや住宅ローンで融資を受けることはできます。

返済中の住宅ローンがある場合には、住宅ローンとリフォームローンがセットになった「リフォーム一体型住宅ローン」への借り換えも可能です。

また、ローンを組む場合には減税制度も利用しやすくなります。

例えば、住宅ローンが10年以上ある場合、「住宅ローン減税」が利用できます。

さらに、耐震改修やバリアフリーリフォームも行う場合、「所得税の控除」や「固定資産税の軽減措置」などの減税制度も利用しやすくなります。

7.増築で固定資産税は上がる?

増築をすると、建物を調査し直して新たな評価額がつくため、固定資産税は上がります。

固定資産税は、この評価額に1.4%の税率をかけた金額です。

平均的には、工事費の40%に1.7%を掛けると、固定資産税の大体の増加額がわかるとされています。

床面積が増えるほど固定資産税は上がり、一概にはいえませんが、大規模な増築でなければ年間で数千円〜数万円程度の増額となるでしょう。

一方で、二世帯住宅化のような大掛かりな増築では、床面積もたくさん増えるため、固定資産税が大幅に増額するかもしれません。

なお、「固定資産税の軽減措置」の期間中である築浅住宅では、床面積の総合計に注意が必要です。

増築によって居住用部分の床面積の合計が280㎡を超えると、原則として、この軽減が打ち切られてしまいます。

「固定資産税の軽減措置」とは、一般的な一戸建て住宅において、条件を満たす場合に新築後3年度分(長期優良住宅の場合は5年度分)の固定資産税が減額される制度です。

8.増築に登記は必要?

床面積が変わる増築では、変更があったときから1ヶ月以内に「建物表題(表示)変更登記」を行わなければなりません。

自分で申請することもできますが、土地家屋調査士に依頼することもできます。

手続きには、6万円~10万円ほどの費用がかかります。

9.増築費用の相場

増築費用の相場を場所別にご紹介します。

9-1.キッチン・トイレ・浴室の増築

 

キッチン、トイレ、浴室といった水回りの増築は、配管工事の手間がかかるため、費用が高くなります。

また、システムキッチン、トイレ、ユニットバスなどの設置する機器の本体価格や、間取りによっても費用は変動します。

設置が2階以上の場合は、配管追加工事も必要となり、さらに費用が高くなるため予算組みに注意しましょう。

 

【費用の相場】

・キッチンの増築:100万円~400万円

・トイレの増築:70万円~200万円(広さ1畳程度)

・浴室の増築:80万円~250万円(広さ2畳程度)

9-2.離れ・1階の増築

現状の建物の離れや1階部分に、洋室や和室といった部屋を増築する費用は、1畳(約0.5坪)あたり25万円〜60万円です。

鉄骨造よりも、木造やプレハブ造の方が費用は安く抑えられます。

 

【費用の相場】

〔部屋の増築〕

・木造:30万円〜40万円/畳

・鉄骨造/鉄筋コンクリート造:50万円〜60万円/畳

〔離れの増築〕

・木造:40万円〜50万円/畳

・鉄骨造/鉄筋コンクリート造:50万円〜80万円/畳

・プレハブ造:25万円〜40万円/畳

※離れを新しくつくる場合、別途、地盤工事も必要になることがあります。

 

窓や収納をつくるかどうかによっても費用は異なり、内装のデザインや材質にこだわると、さらに費用は高額になります。

また、リビングや離れを増築する際に、キッチンや洗面台などの水回り設備を設置すると、別途、配管工事が発生する可能性があります。

キッチンは50万円~100万円、ミニキッチンであれば30万円~50万円、洗面台は10万円~50万円くらいの予算を見込んでおくと良いでしょう。

なお、多くの場合、面積が広くなるほど一畳あたりの費用は安くなります。

9-3.平屋に2階を増築

2階を増築する場合、耐震性を確保する必要があるため、ほとんどの場合で1階の補強工事が必要となります。

さらに、屋根の解体やつくり直しなども必要となるため、1階の増築よりも費用がかかり、1畳(約0.5坪)あたり50万円~100万円程度です。

1階の増設と同じく、どのような部屋をつくるのか、トイレなどの水回り設備を設置するのかによっても費用は変動します。

面積が広くなるほど一畳あたりの費用が安くなる点も同じです。

9-4.ベランダ・サンルームの増築

2階にベランダを増築する場合、費用は1畳(約0.5坪)程度のもので25万円~50万円です。

1階部分の補強工事が必要かどうかや、ベランダの取りつけ方、屋根の有無によっても費用が変わってきます。

また、室内干しなどに活用できるサンルームを後づけする場合も、床面積が増えるため増築扱いとなります。

新しくサンルームを増築する費用は、40万円〜200万円程度です。

スタンダードなサンルームであれば100万円以内で施工できますが、ハイグレードなものや広々したタイプ、2階に設置する場合などは高額になることがあります。

9-5.ガレージ・カーポートの増築

新たに駐車スペースをつくる場合、屋根で覆うことができるカーポートは予算を抑えやすいため人気です。

風雨をしっかり防ぎたい場合には、壁で囲まれているガレージがおすすめです。

1台用のカーポートを2台用に拡張する場合は、工事の方法や規模によって費用が変動します。

 

【費用の相場】

〔独立したガレージの増築(1台分)〕

・既製品/木造:80万円~150万円

・鉄骨造/鉄筋コンクリート造:150万円~300万円

〔ビルトインガレージの増築〕

150万円~300万円

※高額なシャッターも設置する場合、350万円〜400万円

〔カーポートの増築〕

・1台分:20万円~60万円

・2台分:30万円~70万円

〔カーポートの拡張〕

30万円~250万円

 

なお、使用していない部屋がある場合、床面積を変えずにビルトインガレージへ変更できることがあります。

建物の一部をビルトインガレージへ変更する場合、費用は60万円~250万円ほどですが、場合によっては250万円を超えることもあります。

10.増築を依頼する業者の選び方

ここでは、増築を依頼する業者の選び方について解説します。

10-1.ハウスメーカーへ依頼する

大手ハウスメーカーで建てた建物の場合、増築のような大規模工事は同じハウスメーカーへ依頼しましょう。

というのも、一般的にハウスメーカーの建物は「型式適合認定」という独自の構造計算が用いられていて、そもそも増築のハードル自体が高いためです。

なお、増築ができたとしても、競合相手がいないため費用が高額になる可能性があります。

このため、予算内で施工ができるかなどを、ハウスメーカーの窓口に相談してみると良いでしょう。

10-2.建築士がいる業者へ依頼する

増築の依頼は、一級建築士、二級建築士、木造建築士が在籍する業者にに依頼するのがおすすめです。

建築士であれば、確認申請や既存不適格建築物の耐震審査、減税制度などで必要となる「増改築等工事証明書」の発行にも対応できます。

ただし、建物の床面積や種類によっては、二級建築士や木造建築士では対応できないことがあります。

床面積300㎡超の3階建て鉄筋コンクリート造の建物などは、一級建築士でなければ設計、工事監理ができないことになっています。

このため、これに該当する場合には一級建築士へ依頼するようにしましょう。

10-3.実績が豊富な業者へ依頼する

増築では、施工後に雨漏りが発生してしまうケースがあります。

このようなトラブルを避けるためには、増築の実績が豊富にある業者へ依頼することが大切です。

また、各社の提案内容を比べることで、費用を抑えることにも繋がるため、できれば複数の業者へ見積もりを依頼し、時間をかけて比較検討してみると良いでしょう。

11.増築には妥協も必要

法的な問題や予算の関係などで、増築ができない場合には妥協することも必要です。

違法だと知った上で増築をすると、最悪の場合、取り壊しを要請されることもあります。

希望する増築ができそうにない場合は、確認申請が不要な範囲で間取り変更ができないかなどを、建築士に相談してみましょう。

増築にこだわらず、「三世代で住みたい」や「介護しやすい家にしたい」などの目的を話してみると、意外な解決策を提案してもらえるかもしれません。

12.まとめ

増築には法的な制限があるため、建物の状態によって工事できる範囲が大きく変わります。

まずは、増築についての知識があり実績も豊富な業者に現地調査をしてもらい、要望を伝えて実現可能かどうかを確認してみましょう。

場合によっては費用が高額になることもあるため、補助金やローン、減税制度を活用するのもおすすめです。

法的な問題や予算をオーバーしているなどで増築が難しい場合には、業者と相談しながら妥協案を検討してみると良いでしょう。

(株)ありがとうの家 代表 塩川昌志(二級建築士)

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